不動産エージェント600人超を擁し、不動産仲介事業を行うのがTERASS(テラス:東京都港区)だ。個人の自由度を高め、主体的に働き方が選べる業界づくりを目指す。
働き方の自由度高める
年2000件を仲介 コミッション75%
事業開始4年にして、TERASSは不動産エージェント600人超を抱えるまでに成長した。
同社は2019年、不動産メディア事業会社としてリクルート出身の江口亮介社長と、モバイルゲームの開発などを行うKLab(クラブ)出身で開発を手がける高坂昌行CTOが創業した。
「『不動産業界にどういうインパクトを与えることができるのか』を江口社長らが考え当社の設立に至った。海外では当たり前である『不動産エージェント』は日本でも増えていくはずだと考えた」と井上利勉取締役は話す。20年にエージェントによる提案型不動産検索サイト「Agently(エージェントリー:現Terass Offer(テラスオファー)」を公開し、エージェント型の不動産会社として存在感を高める。
23年の売買仲介件数は約2200件で、エージェントが受け取るコミッション率は、仲介手数料の75%だ。件数ベースの内訳では8割超が実需向け住宅の売買仲介、1割が投資用物件の売買仲介、1割弱が賃貸仲介となっている。
顧客本位の接客 自立自走が肝
同社は「いい不動産取引は、いいエージェントから。」をミッションに掲げる。エージェントが個人としてエンドユーザーから選ばれることで同社が考える「いい不動産取引」の実現を目指す。
「日本の不動産業界は労働生産性が低い。アナログで煩雑な業務が多いことで顧客に向き合う時間が少なく、その中で売り上げを上げるために、会社都合を顧客に押し付けてしまう。この問題を根本的に解決するには、まず労働環境から変革する必要があると考えた」(井上取締役)
エージェントはフリーランスで、出社の義務はなくノルマもない。
一方で、集客には会社の看板でなく、個人の力が試される。ポータルサイトに広告を出稿する場合は、エージェント個人での費用負担が発生する。また、フルコミッションのため固定給はない。「自立、自走ができる人でなければエージェントという働き方は厳しい。コミッション率が高いからといって、楽に稼げるわけではない」と井上取締役は話す。
仕組みと教育充実 受講後売上5倍も
不動産エージェント会社が増える中で、強みはサポート力だという。
契約書のひな型の提供や、すべての契約書のリーガルチェック、同社独自の営業支援ツールの提供などが受けられる。加えてTerass Offerによる集客支援や複数の銀行と提携するなど、営業しやすい環境も整える。
エージェントへの伴走体制もある。各エージェントと本部のサポーターが、週1回から月1回程度の面談を行い、各自の目標に合わせた達成度合いと自己実現の方向性などを話し合っている。
Terass Offerのイメージ
体系的な教育制度も作り上げた。売り上げをアップさせたいエージェントに向けた有料講習を実施。全10回の実需用物件の売買仲介向けセミナー「Top Agent Academy(トップエージェントアカデミー)」では、エージェントとしてのマインドセットと、実践的な集客手法、体系的な講義、ロールプレーイングなどを行う。
全7回の「Wealth Management Academy(ウェルスマネージメントアカデミー)」は、収益不動産領域の経験がないエージェント向けに営業手法を講習する。
どちらも1期10人を定員とし、これまで計100人超が受講。受講者の仲介売り上げは平均で3〜5倍程度まで伸びているという。
「不動産会社の看板ではなく、営業担当個人からエンドユーザーが選ぶ世の中にしたい。それこそが顧客目線のよりよい不動産取引の実現につながる」(井上取締役)
TERASS
東京都港区
井上 利勉 取締役・CAO(35)
(柴田)
(2024年7月1日20面に掲載)