大阪府の北部、島本町を走る阪急電鉄京都線の水無瀬駅の改札を出たすぐ先に、一見しただけでは見逃してしまいそうな商店街「島本センター」の入り口がある。店舗数30軒の小さな通りだが、現地を取材した平日の午後は、高齢者や親子連れを中心に人通りが絶えなかった。だが、2年前までは、半分が空きテナントのシャッター街だった。
島本町の市街地中心部にある水無瀬神宮は、鎌倉時代の後鳥羽上皇にルーツがある。上皇の崩御を受け、在位中に訪れていた水無瀬離宮の跡地に建てられたのが始まりだ。町の歴史は古く、町内には住人が生活する古民家が点在する。一方で、京都市にも大阪市にも出やすい立地から、近年はマンション建設が活発だ。人口が増加する恵まれた状況にあるが、古くからの住民と、新しく越してきた住民との交流が求められるようになった。
綿島光一さんが、島本センターでラーメン店を開業する知人に「スペースが空いているので何かやらないか」と誘われたのは2022年の初め頃だ。人通りは少なかったが、改札口のすぐ横ながら、テナント料が安いため、興味を持った。無人のギョーザ販売店「水無瀬餃子」をオープンしたのは5月だ。「インスタグラム」を中心にSNSで呼びかけると、利益を出せる程度に売り上げを確保できた。だが、どうにも人通りが少なく、島本センターに人を集めなければ、それ以上売り上げを伸ばせないことは明白だった。