イタンジ 東京都港区 永嶋章弘 社長(38)
賃貸業務効率化サービスシリーズ「ITANDIBB+(イタンジビービープラス)」などを提供するイタンジ(東京都港区)の新社長に1日、永嶋章弘氏が就任。今後の展望を聞いた。
永嶋新社長体制下で機能拡充
仲介約8万店利用
イタンジは、東証グロース市場に上場するGAtechnologies(ジーエーテクノロジーズ以下、GA:同)の子会社で、不動産賃貸管理・仲介事業向けの業務効率化サービスを提供する。
管理会社向けには業務効率化システム、ITANDIBB+を展開。サービスのラインアップとして、ウェブ申し込みサービス「申込受付くん」など全9システムをそろえる。申込受付くんを使用した電子申込件数は、年間で約92万件だ。
そのほか、業者間流通サイト「ITANDIBB」、追客や反響対応を行う「nomadcloud(ノマドクラウド)」がある。ITANDIBBを利用する仲介店舗は7万9000店舗(7月末時点)。3年で2.7倍に増加した。4月には公益社団法人全日本不動産協会(以下、全日:東京都千代田区)に業務支援システム「ラビーネットBB」の提供を開始。利用企業の増加に拍車をかける。
1年で利益281倍
同社の業績は急成長中だ。GAの22年10月期決算のうち、イタンジのセグメント売上高は前期比74.9%増の20億4600万円。セグメント利益は同281倍の2億8100万円と大幅に拡大した。23年10月期は第三四半期までのセグメント利益で6億3900万円と躍進する。
永嶋社長は「これまで、宅地建物取引業法の改正に合わせて人員増強や機能拡張を進めてきた。22年から投資効果を発揮できた」と話す。
再入社で社長起用
永嶋社長は、一度退社し再入社。その後5年で社長に抜てきという異色の経歴の持ち主だ。
14年にシステムエンジニア(SE)としてイタンジに入社。物件確認の自動応答システム「ぶっかくん」を立ち上げた。その後メルカリ(東京都港区)に転職。18年に執行役員としてイタンジに戻り、先頭に立ってSEの採用を担当。体制強化に貢献してきた。並行して、入居希望者が店舗に行かずに契約まで完結できる、賃貸物件仲介サイト「OHEYAGO(オヘヤゴー)」を立ち上げた。
今回の社長交代は、22年11月の食事会で初めて話に上がったという。GAの樋口龍社長、イタンジの野口真平前社長と3人で顔を合わせた場で、野口前社長の辞任の意向が明らかになり、永嶋社長に白羽の矢が立った。永嶋社長は「全日へのシステム提供が、野口前社長の中で一つの区切りになったようだ」と話す。
売買向け開発視野
今後は基幹システムの強化に本腰を入れる。
23年5月に管理会社向け基幹システム「ITANDI管理クラウド」をリリース。これまでは各業務の効率化システムの開発に努めてきたが「さらなる不動産会社の生産性向上に寄与できるはず」(永嶋社長)と意気込み、機能拡充を進めていく。将来的には、売買領域などでもシステム提供したい考えだ。
そのためにまず取り組むことは、組織の強化。永嶋社長は「基幹システムという不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)の本丸を攻めるためには、組織として同じ方向を向くことが重要」と話す。社員に対し、会社としての方向性を明確にしていくという。
「長期での会社成長を考え、企業として成熟していきたい」(永嶋社長)
(柴田)
(2023年11月6日20面に掲載)
