住宅以外の土地活用ビジネス~葬儀場編~

メモリアホールディングス

商品|2022年03月16日

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トレーラーハウス型式場である通称「家族旅行」の外観

 岐阜県内の16カ所に葬儀場を構えるメモリアホールディングス(岐阜県大垣市)が、全国フランチャイズチェーン(FC)展開に乗り出した。同社が採用するのはトレーラーハウスを利用した葬儀場で、葬儀規模の縮小ニーズに合わせた家族葬のプランとなっている。同社の松岡泰正会長兼社長に、FC展開での勝算について聞いた。

トレーラーハウスを利用した葬儀場

家族葬の増加追い風に

―2000年に創業した時の経緯を教えて下さい。

松岡 創業以前は家業で浄化槽点検事業を行っていました。浄化槽とは下水道がない地域に水洗トイレを設置するときに必要なものなので、下水道が通れば不要です。次第に地元でも下水道が整備されることになり、家族で新規事業を探し目を付けたのが葬儀事業でした。それが1990年ごろの話で、弟が葬儀会社で修業することになりました。10年ほどたった時に、その葬儀会社で叔父の葬式を行ったのですが、800人もの人が参列し、俳句や詩吟を手向けてくれる人もいました。叔父が地域の有力者の会社で社長を任され、俳句や詩吟をたしなんでいたことを、その時初めて知ったのです。葬式で叔父の人望の厚さを知り、こういう機会でなければ知れないこともあると思いました。起業するのに勇気が出ずにいたのですが「亡くなった人とご家族中心の温かい葬式をやりたい」と創業を決めました。

―トレーラーハウス型の葬儀場を展開することにしたのはなぜですか。

松岡 このモデルは1年ほど前から始めたのですが、新型コロナウイルス下で参列する人が激減したことがきっかけでした。葬儀事業を始めた2000年ごろは、岐阜県でも参列者が120~150人ほど来ることが一般的でしたが、コロナ前には15~20人になり、コロナ禍の影響で平均10人以下まで減少しました。家族葬や密葬という小規模な葬儀を求める人が全国的に増え、今までの葬儀場のサイズでは合わなくなったのです。コンビニエンスストアを改装して葬儀場にすることも試しましたが、やはり葬儀には建物の雰囲気が重要で、コンビニの雰囲気が残ると難しいという結論に至りました。そのときに、トレーラーハウスの利用を思い付きました。3棟をコの字形に置けば中庭ができて、小洒落(こじゃれ)た雰囲気をつくることができるのではないかと。通常の建築物で中庭をつくると膨大なコストがかかり、一度建てると再生不可能ですが、トレーラーハウスなら撤去も比較的簡単にできます。

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内装は高級リゾートホテルをイメージ。バーカウンターを設置したモデルも

―なぜ葬儀場は一度建てると再生不可能なのでしょうか。

松岡 レストランを葬儀場に改築できても、葬儀場からレストランに改築はできません。「元葬儀場」というイメージが強く、心情的にその後の建物を使う人が少ないからです。使わなくなった葬儀場は撤去するしかなくなりますが、コンビニ改装モデルの施設(相談サロン兼法要式場)の撤去にも2000万円ほどの費用が掛かりました。その点、トレーラーハウスであれば設置も撤去もリユースも簡単で、場合によっては本部で買い取ることも可能です。

スーパーバイザーが集客を指導

―葬儀場の概要は。

松岡 当社が展開するトレーラーハウス型式場は「最後の家族旅行」をコンセプトとしており、内装設備は高級リゾートホテルのような雰囲気づくりをします。標準モデルではトレーラーを3棟使用、土地は250坪以上で出店できます。加盟金は300万円、出店許諾料が200万円、研修受講料は80万円です。ロイヤリティは売り上げの3%で、10年間の加盟契約です。「買い取り」と「レンタル」の2パターンがあります。買い取りの場合、トレーラーハウス3棟の内装・家具付きで6550万円、それに看板や整地・造成、電気・ガス・上下水道の引き込みなどもろもろの費用を加えて8250万円程となります。その他に、運転資金として1250万円ほど必要です。レンタルの場合はトレーラーハウス代が不要になるので、約1700万円と運転資金2000万円で起業できます。トレーラーハウスは基本的には車両という扱いですが、自治体によっては建築物として判断されるケースもあります。その場合はトレーラーハウスの下に基礎をつくるなどの対応が必要です。基礎をつくる場合は、建築確認も含めて540万円ほど費用がかかります(自社実績)

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木目調で温かな雰囲気のヴィラ棟

―収益モデルは。

松岡 葬儀単価80万円で月間受注10件を目安とし、年間売上高は9870万円ほどを見込んでいます。償却前営業利益は買い取りの場合で28%程度、レンタルの場合は21%ほどを想定しています。月間に6、7件で損益分岐点を超える計算です。また当社は、00年創業当初から会員制度を作り、プランに合わせた割引による集客方法を確立しています。地域とのつながりをつくっていくノウハウを持っているので、開業後数年で月10件の受注は見込めます。各自治体で人口の推移を発表しているので、年間の死亡者数の予想が立てられますし、少子高齢化もあって40年をピークに今後も需要は増え続けるでしょう。

―理想とする葬儀を行うためには、スタッフの教育も重要になってくるかと思います。

松岡 オープン前に3カ月間当社で研修を受けてもらう予定です。葬儀の受注や式の挙げ方、接客方法などを直接指導します。開業後1カ月間は本部のスーパーバイザーが現場に張り付き、サポートします。思い出を語り合う温かい最後の家族旅行を提供するため、加盟店を支えたいと思っています。

 

松岡 泰正 会長兼社長

松岡 泰正 会長兼社長(56)

まつおか・たいせい■1965年生まれ。国立岐阜工業高等専門学校を卒業後、両親の営む浄化槽メンテナンス会社に入社。2000年に新規事業として葬儀会社を立ち上げ、十数年で葬儀専門業者としては岐阜県最大級の企業に育てる。現在は同業者向けの勉強会も主催しており全国20社以上への経営指導を実施している。

(2022年3月14日19面に掲載)

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