企業研究vol.019 苗加 充彦 社長
インタビュー|2019年06月28日
学生向けサービスに注力し管理戸数8480戸
「日本一マメな不動産屋を目指します」をキャッチコピーに、石川県金沢市を中心に賃貸管理・仲介を展開するのが苗加不動産だ。管理物件の学生入居者が約8割を占める同社では、金沢大学への無料通学バスの運行や学生向けカフェの運営などサービスを充実してきた。学生向けへのシェアを拡大する同社の苗加充彦社長に今後の展開を聞いた。
入居者専用バスやカフェ運営し紹介客が増加
――御社の管理物件は学生が多く、ユニークなサービスを次々と展開されていますね。
苗加 当社は金沢大学周辺に賃貸管理を展開しています。8年前から「マメバス」という名で、学生入居者向けに3ルートで金沢大学までを朝と夕方、計16便運行を無料で始めました。その結果、今では金沢大学で賃貸生活する学生のおよそ6割が当社の管理物件に住んでいます。
学生入居者向け無料通学バス「マメバス」
――学生入居者に特化したカフェも運営しているそうですね。
苗加 2017年に本店の近くの管理物件の1階で「マメックスカフェ」をオープンしました。朝食をとらない学生が非常に多いことを考慮したのと、紹介すると入居期間中の朝食が無料となる仕組みによって、紹介客が増えることを狙いました。その結果、カフェをオープンしてから管理戸数は1000戸ほど増加。紹介も今年は200件ほどありました。金沢大学の入居者が契約する物件は4500戸ほどあるのではないでしょうか。
――無料バスやカフェの運営はかなりのコストになりますね。
苗加 単体で見たらそれぞれの事業は赤字です。ただ、もともとここで収益を上げようと考えているわけではなく、あくまでも紹介客を増やす仕組みとして位置付けているのです。口コミ効果は抜群です。学生入居者の出身は圧倒的に北陸が多く、先輩後輩というつながりもあり、紹介が増えているようです。宣伝として考えたら、効果は高いです。今年4月にはカフェの2号店を新たにオープンして、より多くの入居者がサービスを享受できるようにしました。
学生向けカフェは試験前になると満席の大賑わい。
3ランクに分けて入居者向けカードを発行
――無料バスやカフェはどのように運営しているのですか。
苗加 入居者さんは「マメックスメンバーズクラブ」という入居者向けサービスに加入します。「マメックスカード」を所持しているとサービスを受けられます。このカードは3ランクに分けており、紹介を受けたり、紹介をしたりするとそのランクが上がります。例えば、ランクが上がるとカフェのドリンク代や軽食メニュー1食分が無料になったり、メンバーだけでなく同伴者も無料になるなど、特典が多くなる仕組みです。
――金沢大学内に専用カウンターを設けて、入居者向けの生活サポートも行っていると聞きました。
苗加 17年に金沢大学と業務提携し、学生入居者のお困り事を解決する窓口を、キャンパス内に開設しました。例えば、鍵をなくしたとか、水が出なくなったなどのトラブルに対応しています。また、金沢大学から委託を受けて、一般学生と留学生が住む学生寮の管理も当社で行っています。
――御社が学生に注力して展開するようになったきっかけは何ですか。
苗加 金沢にさまざまなFC店が増えてきた時に学生に特化して差別化を図ろうと考えたのがきっかけです。『金沢ひとり暮らしガイド』を毎年作製し、大学入試日に配布して周知してきました。最近では金沢市の隣の野々市市に食事付き学生会館をオープンしたり、小松市に全1 5 5 戸の学生マンションの建築を計画したりしています。今後も学生入居者が快適に生活できるようなサービスを提供していきます。