投資用マンションの販売などを行うプロパティエージェント(東京都新宿区)は、上場を廃止。2023年10月にグループの持ち株会社ミガロホールディングス(以下、ミガロHD:同)が東証プライム市場に上場した。
流通株式、時価100億円実現へ
M&Aを推進
ミガロHDの中西聖社長は、持ち株会社化の狙いとして大きく二つを挙げる。一つ目は、M&A(合併・買収)の推進。二つ目は、DX(デジタルトランスフォーメーション)による生産性の向上だ。
時価を高めることで、東証プライム市場の上場基準である、流通株式時価総額100億円を27年までに実現していく。23年7月末時点の同社の流通株式時価総額は34億円。「1株の時価を上げることと市場に流通する株式を増やすこと、双方を行う」(中西社長)
一つ目のM&Aについては、成長分野と位置付けるDX推進事業を強化するにあたって、システム開発会社の取得を検討する。中西社長は「親会社が不動産事業の会社だと違和感を持たれるケースが多い。持ち株会社化により不動産色がなくなり、システム会社の情報やITスキルを持つ人材が集まりやすくなる」と話す。
二つ目のDXによる生産性向上については、これまでのM&Aで増えてきたグループ会社のバックオフィス業務の統合などを行っていく。
生成AI、活用模索
同社の売り上げの柱である、収益不動産の開発・販売・仲介を含むDX不動産事業においても、生産性を高め、売り上げを伸ばしていく。
仕入れで件数を拡大しやすい中古区分マンションの売買仲介の案件を増やす。中古については東京都23区内を中心に取り扱っていたが、23区外の物件の取引も進める。
DX不動産事業のセグメント売り上げは、24年3月期の第3四半期(以下、3Q)に307億200万円となった。前年同期比で23.7%の増収。投資用中古物件の比率は、23年3月期3Qの31.4%から、24年3月期3Qには38.3%に高まってきている。
同事業の拡大にあたっては、営業1人あたりの月間の販売件数をDXにより1.5件から3件に伸ばす。
「当社のDXは10段階中で2段階くらいのフェーズ。投資家顧客16万人超のうち、契約に至らなかった会員への効果的な販売を見込んでいく」と中西社長は話す。
DXにあたって、生成AI(人工知能)の活用による業務効率化の可能性を感じている。すでに実務での活用も進めている。投資家向けのオウンドメディア「不動産投資Times(タイムズ)」の記事作成にChat(チャット)GPTを生かす。外部ライターへの依頼がなくなっただけでなく、安定したコンテンツ提供ができるようになった。
賃料設定、自動化へ
試験的に試しているのは、賃料設定の自動化だ。同社では毎月、会議で担当者がプレゼンテーションをし、その内容を踏まえて関係部署で話し合い、新規物件の賃料を決定している。ChatGPTに担当者が作成したプレゼン資料を提供し家賃設定を依頼したところ、会議で30分かけて決めた賃料とほぼ誤差がない例も出てきたという。検証を進め、業務での活用も想定する。
販売事業においては、マーケティング領域で生成AIを生かす余地が大きいとする。「当社の持つマーケティング、成約、顧客との会話のデータ。これらをChatGPTに分析させることで、投資家の反響を得られる提案ができるようになる」と中西社長は話す。
今後、生成AIの精度がさらに高まることで、人手で物件の選定や営業時の提案を行う工程をなくすことができる可能性があるとする。
中西社長は「労働人口が減り、人材の採用が厳しくなる中、生産性を高められない不動産会社は淘汰(とうた)されていく。あと5年もすれば不動産業界の再編が進むだろう。国内のマーケットが縮小する中、シェアを拡大していく」と先を見据える。
(河内)
(2024年3月18日20面に掲載)